第5回:チャームポイント |
哀愁のシッポ
ボクがお座りしていると、ユミちゃんはよく後ろから声をかける。「なに〜?」って振り向くと、別に用事はないんだな、これが。でもボクは嬉しくて、シッポをブンブンふって立ち上がってユミちゃんのところに行くんだけど、ユミちゃんは、「いいの、いいの、どん。そのまま座っていなさい」なんて言うんだ。ユミちゃんはどうやらボクの振り返った顔と、後ろから見たシッポが好きらしい。これってイヌ的には困るよね。だって大好きな人に名前を呼ばれたらとりあえずは振り返るけど、それで目が合ったら絶対にそばに行きたくなるのがイヌの習性なんだもの。「待て」って命令されて(※1)「振り返ったままでいて」なんてユミちゃんは言うけど、もう体はウズウズ。そ、そ、そんなあって感じ。
お父さんは、ボクのお昼ねの姿が好きらしいよ。あんまり日なたが気持ちいいと、時々お腹を出して寝ているらしいんだけど、お父さんは「いいなあ、どんは。今度代わってほしいものだよ」って言うもん。お父さんの代わりに会社に行くのはイヤだけど、焼き鳥(※2)食べるときなら代わってあげるんだけどなあ。
|
※1【待て】
イヌをしつける時、最も大切な基本は、常にイヌが主人の動作や命令に集中することです。そしてしつけの基本は「待て」です。食事やオヤツを与える時に待たせる、いわゆる「おあずけ」(待て)はイヌにとっては最も本能に逆らう行為。これがきちんと出来るようにならないと、その他のしつけを教えるのもなかなか大変です。しつけが行き届いたイヌは何処にでも一緒に連れて行けますし、誰からも可愛がられてイヌにとっても幸せです。イヌのためにも飼い主のためにも、きちんとしつけることが大切です。
本文に戻る |
※2【焼き鳥】
渋谷駅の忠犬ハチは焼き鳥が大好物だったそうです。亡くなったご主人の帰りを待って毎日駅に向えに行ったというハチ。当時駅前に屋台を出していた焼き鳥屋さんがハチを哀れに思い、焼き鳥をあげていたというのも有名な話しです。さて、家庭で焼き鳥を与える場合はタレや塩がついていない物に限ります。イヌにとっては塩分が過剰になってしまうからです。もちろん串も外さないと、口をケガすることもあるので注意しましょう。本文に戻る |
愛想が良いっていいことでしょ?
聞いて、聞いて!あの白黒ネコさんが、とうとうウチの庭にやって来たのよ。その日アタシはおばあちゃんの部屋でボーっとしてたの(※3)。おばあちゃんはテレビ見ながらウトウトしてるし、お母さんはお庭の花壇で草むしりしてるし、どんちゃんはそばでワンワン楽しんでる、平和な午後だったの。
ふと気づいたら白黒ネコさん、塀の上からお母さんを見おろしているじゃない。ビックリ。お母さんも気がついて「あら〜、コンニチワ」って声をかけたのね。そしたら「んんにゃあああん(コンニチワ)」って挨拶したの。噂には聞いてたけどホントに愛想がいいのね。おばあちゃんに窓を開けてもらって庭に出たアタシも、「ニィ〜」って挨拶。そうなの。アタシもかなり愛想がいいから、結局ふたり塀の上でお喋りすることになっちゃった。聞けば白黒ネコさん、飼い主が変わること4回(※4)。名前が変わること4回。引っ越しも沢山。波瀾に満ちた人生を送ってきたんですって。アタシには想像できないけど、なんだか好きになっちゃった。今の名前は銀子ですって。嬉しいな、仲良しになれて。
|
※3【ボーっと過す】
ネコにとって飼い主のそばで昼寝をしたり、一緒にテレビを見たりする時間はとても大切です。もちろんオモチャを使って遊んであげることも運動不足の解消やストレス軽減のために必要ですが、特別何もしなくてもただ一緒にいてゆったりした時間を過すことは、愛情と信頼を深める意味があるのです。本文に戻る |
※4【飼い主が変わる】
イヌやネコにとって、一生涯変わらぬ飼い主と暮らすことは理想です。とはいえ、やむをえない事情でどうしても飼うことが出来なくなった場合、事情を理解して代わりに世話をしてくれる人に託すことができれば、それはまだ不幸中の幸い。こうした場合、新しい飼い主さんには、それまでどのような生活であったか、ベッド、食事、トイレ、好きなオモチャなど、詳しい情報を伝えることが大切です。また、お願いした後何か問題が起こっても、いつでも一緒に解決方法を考える姿勢を持っていることが責任というものです。本文に戻る |